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画面ティアリングと垂直同期(V-Sync / NVIDIA Fast Sync / NVIDIA Adaptive VSync / AMD Enhanced Sync)

GPU の描画タイミングとモニターの更新タイミングがずれたときに発生する「画面ティアリング(横ズレ)」と、それを抑える垂直同期(V-Sync)系の各方式の解説。従来の V-Sync(ダブル/トリプルバッファ)、NVIDIA Fast Sync、NVIDIA Adaptive VSync、AMD Enhanced Sync の動作条件・入力遅延・スタッタリング特性の違い、VRR(G-SYNC / FreeSync / Adaptive-Sync)との関係を整理します。

GLOSSARY

用語の概要

別表記 画面ティアリングティアリングScreen TearingTearing垂直同期V-SyncVSyncVertical SyncVertical Synchronizationダブルバッファ V-SyncDouble Buffered V-SyncトリプルバッファリングTriple BufferingNVIDIA Fast SyncFast SyncNVIDIA Adaptive VSyncAdaptive VSyncAMD Enhanced SyncEnhanced SyncスタッタリングStutterStuttering

関連用語
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出典
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最終更新
DEFINITION

解説

画面ティアリング(Screen Tearing) は、GPU の描画タイミングと モニターの画面更新タイミングがずれた ときに、1 画面内に 連続する 2 枚以上のフレームが横方向に分断されて表示される 現象です(PCGamingWiki Vsync 解説)。GPU が モニターの 1 フレーム描画途中 で新しいフレームをフロントバッファに書き込んでしまうことで発生し、高速にカメラを横振りした際の電線・建物の縦エッジ で特に目立ちます。

ティアリング抑制の代表手段が 垂直同期(V-Sync / Vertical Synchronization) で、GPU が新フレームをスワップするタイミングをモニターの垂直帰線期間(VBlank)に揃える ことでズレを防ぎます。ただし従来の V-Sync は 入力遅延の増大FPS がリフレッシュレートを下回った瞬間のスタッタリング という代償があり、これを各社が独自方式で改善したのが NVIDIA Fast Sync / NVIDIA Adaptive VSync / AMD Enhanced Sync です。

可変リフレッシュレート([[gsync|G-SYNC]] / [[freesync|FreeSync]] / [[adaptive-sync|VESA Adaptive-Sync]])はこれらと別系統の解決策で、モニター側が GPU の描画完了を待ってから画面を更新 するため、ティアリングと従来 V-Sync の入力遅延を同時に解消します([[vrr-range-lfc|VRR Range]] 内動作時)。

画面ティアリングが起きる仕組み

GPU は バックバッファ(裏側) に新フレームを描き、完成したらモニター側が読み取る フロントバッファ(表側) に切り替え(Buffer Swap)ます。モニターの 1 回の画面更新は数 ms かけて上から下へラスタースキャン されており、その途中で Buffer Swap が走ると 画面の上半分は旧フレーム・下半分は新フレーム の合成画像が表示されます。これが ティアリング で、境界線が水平方向にズレる ことから「横ズレ」と呼ばれます(PCGamingWiki / Intel Triple Buffering 解説)。

  • GPU の FPS > モニターのリフレッシュレート のとき → 1 画面更新中に Buffer Swap が複数回走り、1 画面内に 3 枚以上の断片 が出ることもある
  • GPU の FPS < リフレッシュレート のとき → 同一フレームが複数回スキャンされる場面でもティアリングは起き得る(Swap 完了時刻と VBlank のタイミングがずれる)
  • GPU の FPS = リフレッシュレートで完全同期 が理想だが、フレーム毎の描画時間がばらつくため V-Sync などの仕組みなしには実現困難

V-Sync(ダブルバッファ/トリプルバッファ)

V-Sync(垂直同期)モニターの VBlank(垂直帰線期間)に Buffer Swap を同期させる 方式で、ティアリングを物理的に排除します(PCGamingWiki Vsync)。バッファ数によって挙動と入力遅延が異なります。

方式バックバッファ数動作代償
ダブルバッファ V-Sync1GPU は新フレームを描いたら 次の VBlank まで停止GPU 待機による FPS 半減(リフレッシュレートを下回ると 60Hz → 30fps 等)/ 入力遅延増
トリプルバッファ V-Sync2GPU は 2 つ目のバックバッファに先行描画を継続、最新の完成フレームを VBlank で表示GPU 停止なし(FPS 半減回避)/ +1 フレーム分の入力遅延 が増えるトレードオフ(Intel 公式・PCGamingWiki)

ダブルバッファ V-Sync は FPS がリフレッシュレートを下回ったとき に GPU が VBlank 待機で停止し、FPS が半分(60Hz なら 30fps)に強制ロック されます(PCGamingWiki Vsync)。これが 「V-Sync を有効にするとカクつく」と言われる主因 です。トリプルバッファはこの FPS 半減を防ぎますが、入力遅延が +1 フレーム 増える別のトレードオフを抱えます。

Direct3D 9 のフリップキューと「トリプルバッファ」呼称の混乱

Windows / Direct3D 9 環境で「トリプルバッファ」と呼ばれている実装の多くは、厳密には Direct3D のフリップキュー(render-ahead queue) であり、3 フレーム分先行レンダリングを許す FIFO キュー です。OpenGL / Vulkan の 真のトリプルバッファ(最新完成フレームのみ表示) とは挙動が異なり、追加入力遅延が大きくなる 傾向があります(PCGamingWiki / Intel 公式)。ゲーム側設定の「トリプルバッファ」がどちらの実装か はタイトルによって異なるため、入力遅延の体感差が出る場合があります。

NVIDIA Fast Sync

NVIDIA Fast SyncGPU の描画とモニター表示を切り離した非同期トリプルバッファ の一種で、NVIDIA Pascal 世代以降の GeForce ドライバで提供されています(NVIDIA GeForce Forums 公式解説)。

  • 動作: GPU は モニターのリフレッシュレートに縛られずに最大 FPS で描画 し続け、VBlank のタイミングで最新の完成フレームのみ を画面に送り、中間フレームは破棄 する
  • 動作条件: FPS > リフレッシュレート のときのみ有効。FPS < リフレッシュレートのときは自動的に無効化 され、ティアリングは抑えられない(NVIDIA Forums・公式 verbatim「only works when your FPS exceeds your refresh rate」)
  • 入力遅延: 従来 V-Sync より低遅延(GPU 待機がない)。ただし 真の VRR(G-SYNC)より高遅延
  • 想定用途: 古い競技系タイトル(CS:GO / Overwatch 等)で FPS が数百出る一方、モニターがリフレッシュレート上限 のとき
  • G-SYNC との併用: NVIDIA は FPS がリフレッシュレートを大きく超える領域では Fast Sync、VRR 範囲内では G-SYNC という組み合わせを案内している(NVIDIA GeForce Forums)

Fast Sync を有効化する際は ゲーム内 V-Sync を必ず OFF にし、NVIDIA コントロールパネル側で V-Sync を「Fast」に設定する必要があります(NVIDIA Forums)。ゲーム内 V-Sync が ON のままだと、ゲーム側のフレームキャップが優先されて Fast Sync が機能しません。

NVIDIA Adaptive VSync

NVIDIA Adaptive VSyncFPS とリフレッシュレートの関係で V-Sync を動的に ON/OFF する方式です(NVIDIA Adaptive VSync 公式・verbatim「frame rate is above the monitor’s refresh rate, Adaptive VSync disables VSync, preventing tearing. When the frame rate drops below the monitor’s refresh rate, Adaptive VSync enables VSync」)。

  • FPS > リフレッシュレート のとき → V-Sync 無効(フレーム破棄せず描画 = ティアリングは出るが入力遅延を増やさない)
  • FPS < リフレッシュレート のとき → V-Sync 有効(GPU 停止による FPS 半減を防ぐ)
  • 対応 GPU: GeForce GT 600 シリーズ以降(NVIDIA 公式)
  • 設定箇所: NVIDIA コントロールパネル → 3D 設定の管理 → 垂直同期「適応」

Adaptive VSync は VRR が普及する前の旧世代向け代替 という位置づけで、G-SYNC / G-SYNC Compatible モニターを使う場合は VRR を優先 すべきです。Fast Sync とは 動作モードが逆(Fast Sync は FPS 超過時に有効、Adaptive VSync は FPS 超過時に無効)である点に注意してください。

AMD Enhanced Sync

AMD Enhanced Sync は AMD が 2017 年の Radeon Software 17.7.2 で導入 した方式で、Fast Sync に相当する GPU の描画とモニター表示を切り離す 設計です(AMD Community Radeon Software 17.7.2 公式 / AMD Enhanced Sync 公式ページ)。

項目AMD 公式 verbatim
目的「helps gamers minimize screen tearing while decreasing the latency and stutter of traditional VSync」(従来 VSync より低遅延・低スタッタでティアリングを最小化)
ティアフリー条件「a tear-free experience when framerate exceeds your display’s refresh rate at an ultra-low latency」(FPS > リフレッシュレートのとき)
対応 APIDirectX 9 / 11 / 12 / Vulkan(OpenGL 非対応
対応 GPUPolaris 世代以降の Radeon(Adrenalin 公式)
設定単位AMD Software: Adrenalin Edition の per-game 設定(ゲーム単位)
既知の制約「does not support multimedia applications and may cause flicker」(動画再生アプリで点滅を起こす可能性・対象アプリは個別に OFF)

FreeSync が使えない状況(古いモニター・特定フルスクリーン動作)FreeSync 範囲を超えた高 FPS 領域 での代替手段として位置づけられており、FreeSync 対応モニター + 範囲内動作時は FreeSync を優先 するのが基本です。

Fast Sync と Enhanced Sync の差分

Fast Sync(NVIDIA)と Enhanced Sync(AMD)は 動作思想が同じ非同期トリプルバッファ系 で、両者ともに 「FPS > リフレッシュレート時のみティアフリー」「中間フレームを破棄」「従来 V-Sync より低入力遅延」 という共通項を持ちます。Enhanced Sync 固有 の差分として per-game 設定 UI / OpenGL 非対応 / 動画再生アプリでの既知のちらつき問題 が AMD 公式で明示されています。

VRR(G-SYNC / FreeSync / Adaptive-Sync)との関係

可変リフレッシュレート(VRR)モニター側がリフレッシュレートを GPU の描画完了に合わせて可変 させる方式で、従来 V-Sync の入力遅延ティアリング同時に解消 します([[gsync|G-SYNC]] / [[freesync|FreeSync]] / [[adaptive-sync|VESA Adaptive-Sync]] / [[adaptive-sync-display-cts|Adaptive-Sync Display CTS]])。VRR 範囲内(例: 48〜144Hz) で動作する限り、Fast Sync / Enhanced Sync / V-Sync は不要です。

ただし VRR には 範囲外の挙動 があり、ここで補助技術が登場します。

状況推奨設定(一般論)
FPS が VRR 範囲内VRR のみ ON(G-SYNC / FreeSync)= ティアリングと入力遅延の両方が抑制される
FPS が VRR 上限超えVRR は無効化されティアリングが復活 → NVIDIA: Fast Sync 併用 / AMD: Enhanced Sync 併用 で抑制
FPS が VRR 下限割れ[[vrr-range-lfc
VRR 帯域の上限近辺で点滅[[vrr-flicker

NVIDIA は G-SYNC + V-Sync ON + フレームキャップ(リフレッシュレートより 3fps 程度下) の組み合わせを推奨しており、VRR 範囲内に常にフレームレートを収めることで ティアリングと入力遅延の両方を最小化 する手法が一般的です(NVIDIA GeForce Forums で広く案内)。AMD も同様に FreeSync + V-Sync ON + フレームレート上限設定 が推奨されています。

スタッタリング・ジャダーとの区別

ティアリング(横ズレ)と スタッタリング(カクつき)/ジャダー(不規則な動き)別の現象 です。

現象原因対策
ティアリングGPU 描画と画面更新の 非同期V-Sync / Fast Sync / Enhanced Sync / VRR
スタッタリングフレーム描画時間の ばらつき(V-Sync の FPS 半減、GPU 負荷スパイク、シェーダーコンパイル、メモリ転送)トリプルバッファ V-Sync、VRR、フレームペーシング修正、シェーダー事前コンパイル
ジャダーコンテンツの フレームレートとリフレッシュレートの非整数比(24fps 映画を 60Hz 表示時の 3:2 プルダウン残差等)[[drr-dynamic-refresh-rate

V-Sync 系技術は ティアリングには効くが、スタッタリングを完全には消せない(むしろ FPS 半減で悪化する場合もある)点に注意してください。

仕様欄・ゲーム設定でこう書かれていたら

本サイトの製品ページ・ガイド・ゲーム設定解説で次のような表記が登場します。

  • 「V-Sync ON / OFF」 = ゲーム内のダブルバッファ V-Sync 標準切替(ゲーム側実装が中心)
  • 「V-Sync: Fast」「Fast V-Sync」 = NVIDIA コントロールパネルの Fast Sync モード
  • 「V-Sync: 適応」「Adaptive」 = NVIDIA コントロールパネルの Adaptive VSync モード
  • 「Enhanced Sync」 = AMD Adrenalin の AMD Enhanced Sync モード
  • 「Triple Buffering」 = ゲーム側/ドライバ側のトリプルバッファ V-Sync(実装はタイトル毎に差)
  • 「VRR / Adaptive-Sync / G-SYNC / FreeSync」 = モニター側可変リフレッシュレート([[adaptive-sync|VESA Adaptive-Sync]] 系)

ゲーミングモニター用途では、VRR 対応モニター × 対応 GPU の組み合わせで G-SYNC / FreeSync を有効化 したうえで、VRR 範囲を超える FPS 帯域に達するタイトル でのみ Fast Sync / Enhanced Sync を併用する、というのが現行の一般的な構成です。

本サイトでの取り扱い基準

  • NVIDIA Fast Sync / Adaptive VSync / AMD Enhanced Sync の動作条件・対応 GPU 世代・対応 API は、NVIDIA / AMD 公式ページ・公式コミュニティ投稿の verbatim 引用のみ を採用します。AI が入力遅延の ms 値や FPS 閾値を生成することはしません(HANDOVER 絶対則: ハルシネーション根絶)。
  • ティアリングを完全に消す最強の同期方式」「業界最低の入力遅延」のような最上級・断定表現は、根拠が dated でない限り使用しません(景表法 優良誤認回避)。
  • 編集部による独自のティアリング実測・入力遅延計測は行いません(HANDOVER 絶対則: 編集部実機検証なし)。各方式の実測値は [[input-lag|入力遅延]] 用語集の RTINGS / TFTCentral / NVIDIA LDAT 等の第三者検証ソースに送客します。
  • V-Sync(ダブル/トリプルバッファ) / NVIDIA Fast Sync / NVIDIA Adaptive VSync / AMD Enhanced Sync / VRR(G-SYNC / FreeSync) を厳密に区別して記述します。動作条件(FPS > or < リフレッシュレート)と入力遅延特性が方式によって反対方向に働くため、混同しないよう「どの状況でどの方式が有効か」を明示します。
  • AMD Enhanced Sync の OpenGL 非対応 / 動画再生アプリでのちらつき など、AMD 公式が明示する既知の制約は省略せずに記載します。

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