用語の概要
別表記 EOTFElectro-Optical Transfer Function電光変換関数PQPerceptual QuantizerSMPTE ST 2084ST 2084HLGHybrid Log-GammaITU-R BT.2100BT.2100BT.2100 PQBT.2100 HLGGamma 2.2Gamma 2.4BT.1886ITU-R BT.1886sRGB EOTFガンマリファレンスホワイト
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解説
EOTF(Electro-Optical Transfer Function、電光変換関数) は、映像信号のコード値(0〜255 や 0〜1023 などの整数値)を 画面が表示する実際の輝度(cd/㎡)に変換する関数 です。HDR・SDR を問わず、ディスプレイが「同じ信号をどの明るさで再現するか」を決める骨格の規格層です。
HDR ゲームや HDR 映像の見え方は、HDR / VESA DisplayHDR / HDR10+ Gaming / Dolby Vision Gaming などの上位仕様の前に、どの EOTF を採用しているか で大枠が決まります。本記事は SMPTE / ITU / BBC R&D / Wikipedia の一次・二次出典のみから中立に整理し、本サイト編集部による個別機種別の EOTF 適合実測は実施していません。
EOTF の位置づけ — 信号 → 輝度の対応表
ディスプレイ表示パイプラインは大きく次の 3 層に分かれます。
| 層 | 役割 | 例 |
|---|---|---|
| OETF(Opto-Electronic) | カメラ・レンダラ側で シーンの光 → 信号値 に変換 | 撮影時のガンマカーブ、HLG OETF |
| EOTF(Electro-Optical) | ディスプレイ側で 信号値 → 画面輝度 に変換 | PQ EOTF、HLG EOTF、BT.1886 |
| OOTF(Opto-Optical) | OETF + EOTF の合成として現れる シーン光 → 表示光 の総括カーブ | HLG では明示的に規定(ITU-R BT.2100) |
つまり EOTF は 「ディスプレイが受け取る信号値をどの cd/㎡ で光らせるか」 を決める関数で、HDR の絶対輝度設計や SDR のガンマ補正の中核となる規格層です。
HDR の 2 系統 — PQ(SMPTE ST 2084)と HLG(ITU-R BT.2100)
HDR-TV 用の EOTF は ITU-R BT.2100 に集約されており、ここに PQ と HLG の 2 系統が並列に規定されています(ITU-R BT.2100 公式)。
| 系統 | 出典 | 輝度方式 | 開発元 | 想定用途 |
|---|---|---|---|---|
| PQ(Perceptual Quantizer) | SMPTE ST 2084 / ITU-R BT.2100 | 絶対輝度方式(コード値 → 0〜10,000 cd/㎡ の絶対値) | Dolby Laboratories | HDR10 / HDR10+ / HDR10+ Gaming / Dolby Vision / Dolby Vision Gaming のベース EOTF |
| HLG(Hybrid Log-Gamma) | ITU-R BT.2100 | 相対輝度方式(信号値 → ディスプレイ最大輝度に対する相対値) | BBC R&D + NHK 共同開発 | テレビ放送 HDR(NHK BS 4K HDR・BBC iPlayer 等)、SDR ディスプレイでも一定の互換表示 |
PQ(Perceptual Quantizer / SMPTE ST 2084)の特徴
- 絶対輝度方式:コード値が そのまま cd/㎡(ニト)の絶対値 に対応する(Wikipedia: Perceptual quantizer / ITU-R BT.2100)
- 0〜10,000 cd/㎡ の輝度範囲を規定(実機ディスプレイの最大輝度はパネルにより大きく異なる)
- 人間の知覚特性に最適化 したカーブ(Barten モデルに基づく量子化)で、暗部から明部まで知覚的に均等な階調を割り当てる
- HDR10 / HDR10+ / Dolby Vision の前提 EOTF:これらの規格はメタデータ層は異なるが、信号 → 輝度変換のベースは すべて PQ
- VESA DisplayHDR 認証(VESA DisplayHDR 公式)も PQ EOTF 適合 を要件に含む
HLG(Hybrid Log-Gamma / ITU-R BT.2100)の特徴
- 相対輝度方式:信号値は ディスプレイの最大輝度に対する相対値 として解釈される(BBC R&D / Wikipedia: Hybrid log-gamma)
- 暗部はガンマカーブ、明部は対数カーブ を組み合わせた「ハイブリッド」設計
- SDR ディスプレイでも一定の互換表示 を狙った設計(PQ のような絶対輝度の前提がないため、SDR 機材で表示しても見えなくはならない)
- テレビ放送向け に主に使われる:NHK BS 4K HDR、BBC iPlayer の HDR 配信、YouTube HLG 動画など
- ゲーミングモニター用途では PQ 系統(HDR10)が主流、HLG は仕様欄に明記される場合のみ対応として扱う
SDR の EOTF — Gamma 2.2 / Gamma 2.4 / BT.1886 / sRGB
HDR が普及する以前から SDR ディスプレイは EOTF を持っており、現在も SDR 表示時には次の系統が使われます。
| 系統 | 出典 | 概要 |
|---|---|---|
| ITU-R BT.1886 | ITU-R BT.1886 公式 | HDTV スタジオ制作の参照 EOTF。Gamma 2.4 ベース で 0% / 100% ブラックレベルを考慮した実装。BT.709(HDTV)信号を扱うリファレンス |
| Gamma 2.2 | sRGB の近似カーブ等 | PC モニター・SDR コンテンツの実装上の慣用カーブ。厳密な sRGB EOTF とは小さく異なるが「ガンマ 2.2」として広く運用される |
| sRGB EOTF | IEC 61966-2-1 | sRGB 色空間の正式 EOTF。低域に線形領域 + 高域にガンマ約 2.4 のべき乗を組み合わせた区分関数 |
実機ディスプレイの OSD で「ガンマ 2.2 / 2.4」「BT.1886」「sRGB」といった項目が出てくるのはこれらの SDR EOTF 切替で、HDR 信号(PQ / HLG)が入力された場合は別の自動モードに切り替わるのが一般的な実装です。
リファレンスホワイト — HDR 紙白 203 cd/㎡(BT.2408)
HDR コンテンツの 「紙白(reference white / graphic white)」 はゲーム UI や映画字幕などのベース輝度として参照されますが、これは EOTF とは別レイヤ の運用上の定義 です。
ITU-R BT.2408 公式 は HDR-TV 制作の運用ガイドライン として リファレンスホワイト 203 cd/㎡ を明示しています。
- これは PQ EOTF 上で約 58% の信号値(10-bit で 約 593 / 1023) に対応する値(BT.2408)
- ゲーム機側の HDR キャリブレーション(HGiG ガイドライン参照)でも、PS5「HDR を調整する」や Xbox「HDR ゲーム キャリブレーション」で 紙白輝度の項目 が用意されており、BT.2408 の 203 cd/㎡ を起点に各ユーザのディスプレイへ合わせる運用が一般化しています
なお BT.2408 自体は 規格本体ではなく運用レポート の位置づけで、ITU は折に触れて改訂しています — 個別機種の紙白輝度設定はメーカー公式情報を参照してください。
EOTF と上位仕様の関係(HDR10 / HDR10+ Gaming / Dolby Vision Gaming / HGiG)
ゲーミングモニター・TV の仕様欄に並ぶ HDR 関連表記は、EOTF 層 + メタデータ層 + 認証層 に分けて読むと整理しやすくなります。
| 上位仕様 | EOTF 層 | メタデータ | 関連用語集 |
|---|---|---|---|
| HDR10 | PQ(SMPTE ST 2084) | 静的メタデータ(MaxCLL / MaxFALL / ST 2086) | HDR |
| HDR10+ | PQ | 動的メタデータ(シーン単位) | HDR10+ Gaming |
| HDR10+ Gaming | PQ | Source-Side Tone Mapping | HDR10+ Gaming |
| Dolby Vision | PQ | 動的メタデータ(Dolby 独自) | Dolby Vision Gaming / Dolby Vision 2 |
| Dolby Vision Gaming | PQ | 動的メタデータ + Low Latency | Dolby Vision Gaming |
| HLG 放送 HDR | HLG(ITU-R BT.2100) | 静的(OOTF 暗黙) | — |
| VESA DisplayHDR | PQ 適合を要件 | — | VESA DisplayHDR |
| HGiG(ガイドライン) | PQ 前提 | — | HGiG |
HDR10 / HDR10+ / HDR10+ Gaming / Dolby Vision / Dolby Vision Gaming はすべて PQ EOTF を共有 しており、違いは「メタデータの送り方」と「トーンマッピングの責任分担」にあります。HLG は テレビ放送 HDR 用の別系統 EOTF で、ゲーミング用途では主流ではありません。
仕様欄での読み方 5 例
ゲーミングモニターのメーカー公式仕様欄や本サイト製品ページで EOTF 関連の表記がどう現れるかを 5 例に整理します。
- 「HDR10 対応」 = PQ EOTF + 静的メタデータ の HDR を受け取れる、という意味。VESA DisplayHDR 認定有無は別レイヤ
- 「HDR10 / HLG 対応」 = PQ と HLG の 2 系統 EOTF を扱える設計。テレビ機能を兼ねるディスプレイで見られる
- 「PQ EOTF / Gamma 2.2 / BT.1886 / sRGB を OSD で切替可」 = SDR 入力時の EOTF / ガンマカーブをユーザが選択できる設計
- 「リファレンスホワイト 203 cd/㎡(HDR 時)」 = BT.2408 運用ガイドラインに沿った紙白輝度設定がプリセットされている
- 「HDR 信号入力時に PQ EOTF Tracking が ±X% 以内」 = メーカー公称の PQ 適合精度(編集部独自計測ではない)
本サイトの記載基準
本サイトでは EOTF と PQ / HLG / SDR ガンマについて次の基準で扱います。
- 数値は AI で生成しない:PQ 0〜10,000 cd/㎡ / 紙白 203 cd/㎡ / Gamma 2.4(BT.1886)/ 2.2 等の値は SMPTE / ITU / BBC R&D / Wikipedia の一次・二次出典で確認できる値のみを記載する
- 編集部 EOTF 適合実測なし:本サイトはメーカー公称の EOTF 適合精度や PQ Tracking 値を そのまま転載しない(実機計測機材を持たないため)。記載する場合は メーカー公式仕様欄の引用 に留め、計測値として断定しない
- 最上級表現の回避:「最も正確な PQ EOTF」「業界最高 HDR EOTF 適合」等の最上級表現は SMPTE / ITU / VESA / Dolby / BBC R&D いずれも公式に序列を主張していないため使用しない
- HDR / HDR10 / HDR10+ Gaming / Dolby Vision Gaming / HGiG / VESA DisplayHDR の独立性:これらは EOTF 層 + メタデータ層 + 認証層 + ガイドライン層が独立した規格群で、相互保証ではない ことを明示する
- HLG は放送 HDR の別系統 EOTF:ゲーミング用途では主流ではないため、HLG 対応の表記は メーカー公式仕様にある機種にのみ付与 する
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参照元(一次ソース)
本用語の説明は次の一次ソース(規格団体・メーカー公式資料など)を参照しています。
- 出典: ITU-R BT.2100 公式(HDR-TV 用画像パラメータ値・PQ と HLG の 2 系統 EOTF を規定)
- 出典: ITU-R BT.1886 公式(HDTV スタジオ制作の参照 EOTF・ガンマ 2.4 ベース SDR)
- 出典: ITU-R BT.2408 公式(HDR-TV 制作の運用ガイドライン・リファレンスホワイト 203 cd/㎡ を明示)
- 出典: Wikipedia — Perceptual quantizer(SMPTE ST 2084・Dolby が開発・0〜10,000 cd/㎡ の絶対輝度方式)
- 出典: Wikipedia — Hybrid log–gamma(BBC R&D / NHK 共同開発・相対輝度方式・SDR 互換性)
- 出典: BBC R&D — High Dynamic Range(HLG 開発元による HDR 解説)
- 出典: VESA DisplayHDR 公式(PQ EOTF 適合をモニター向け HDR 認証の中で要求)