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キースイッチの押下荷重(Operating Force / Actuation Force / Bottom-out Force/cN・gf)

キースイッチのスペック表で見かける Operating Force(押下荷重・cN/gf)、Pre-Travel(押下からアクチュエーションまでの距離・mm)、Total Travel(ボトムアウトまでの総ストローク・mm)は、メーカー公式が必ず併記する 3 軸の核スペックです。Cherry / Gateron 等の一次仕様を基にした読み解き方と、cN と gf の単位変換、Operating Force と Tactile Force の違いをまとめます。

GLOSSARY

用語の概要

別表記 Operating ForceActuation ForceBottom-out ForcePressure Point ForceTactile ForceInitial ForceFinal ForceBottom Touching ForcePre-TravelTotal TravelSpring WeightcNgfcentinewtongram force押下荷重押下力アクチュエーション荷重アクチュエーション力ボトムアウト荷重底打ち荷重プリトラベルトータルトラベル総ストロークばね荷重バネ荷重スプリング荷重

関連用語
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DEFINITION

解説

メカニカルキーボードのスペック表には、必ずと言っていいほど Operating Force(押下荷重)/Pre-Travel(プリトラベル)/Total Travel(総ストローク) の 3 軸が並びます。Cherry MX2A や Gateron G Pro 3.0 などのメーカー公式が一次値として公開している指標で、軸(リニア / タクタイル / クリッキー)の性格と並ぶ「数値で確認できる打鍵感の輪郭」です。

本ページは Cherry 公式・Gateron 公式の一次スペックを基に、各値が何を意味するのか、cN と gf の単位変換、Operating Force と Tactile Force の混同を避ける読み方を整理します。

単位 — cN(センチニュートン)と gf(グラム重)はほぼ同じ

押下荷重の単位はメーカーで揺れがあります。

  • cN(centinewton) — Cherry がドイツ本国の公式ページで使う SI 系の単位。1 cN = 0.01 N
  • gf(gram force) — Gateron / Kailh / TTC など中国系メーカーや、Razer の英語仕様で頻出する慣用単位。1 gf は「地表上で 1 g の物体にはたらく重力」

地表の標準重力 9.80665 m/s² で換算すると 1 gf ≈ 0.980665 cN、つまり 45 cN ≈ 45.9 gf。スペック表上の整数 cN と gf は 実質同じ数値として読んで構いません(厳密には 2% ほど gf のほうが大きい)。

例: Cherry MX2A Red の 45 cN と Gateron G Pro 3.0 Red の 45 gf は、表記単位が違うだけでほぼ同等の押下荷重です。

Cherry MX2A 公式の 3 軸 — Operating / Pre-Travel / Total Travel

Cherry MX2A の各製品ページは Operating Force(cN)/Pre-travel(mm)/Total Travel(mm)/>100 mil. or >50 mil. keystrokes(寿命) を公式に開示しています。代表 5 軸を一次値で並べると次のとおりです。

系統Operating ForcePre-TravelTotal Travel寿命Initial / Final Force
MX2A RedLinear45 cN2 mm4 mm>100 mil.30 cN / 100 cN
MX2A BrownTactile・No click55 cN(Operating) / 45 cN(Pressure Point)2.0 mm4.0 mm>100 mil.公式未開示
MX2A BlackLinear60 cN2.0 mm4.0 mm>100 mil.30 cN / 110 cN
MX2A BlueTactile & clicky50 cN2.2 mm4.0 mm>50 mil.25 cN / 公式未開示
MX2A Speed SilverLinear45 cN1.2 mm3.4 mm>100 mil.30 cN / 100 cN

値はすべて Cherry MX2A 各製品ページの『Properties』表 verbatim。本サイトは個別ロットを実機計測していません。Cherry 公式ページの数値が一次の根拠です。

Speed Silver だけが Pre-Travel 1.2 mm / Total Travel 3.4 mm と短く、他の MX2A 軸(Pre 2 mm / Total 4 mm)と差別化されています。リニアの Red と Speed Silver は 押下荷重 45 cN で同じ ですが、移動距離だけが短い のが Speed Silver の本質です。

Operating Force と Tactile Force(押下点の力)は別物

Cherry MX2A Brown の公式仕様は 「Operating Force 55 cN」「Pressure Point Force 45 cN」 を別欄に持っています。これは混同しがちなポイントです。

  • Pressure Point Force(押下点の力) — タクタイル軸で「コリッ」と感じる アクチュエーション点で必要な力。Brown は 45 cN
  • Operating Force(作動力) — タクタイル軸では タクタイルバンプの山(peak)を超えるのに必要な最大の力。Brown は 55 cN

リニア軸(Red / Black / Speed Silver)は タクタイルバンプがないため Operating Force = アクチュエーション力 がそのまま打鍵感に直結します。一方タクタイル軸は 「アクチュエーション点での力」と「最大の力(山)」 の 2 つを意識する必要があります。

クリッキー軸(Blue)も同様にバンプを持ちますが、Cherry MX2A Blue の公式ページは Operating Force 50 cN / Initial 25 cN のみ開示(Pressure Point Force 欄は未掲載)です。

Initial Force と Final Force — 押し始めと底打ち寸前の力

Cherry MX2A の公式表には Initial Force(押し始めの力)Final Force(底打ち寸前の力) も併記されています。

  • Initial Force(初期力) — スプリングが完全に伸びた状態から押し始めるのに必要な力。例: MX2A Red / Black は 30 cN、Blue は 25 cN
  • Final Force(最終力) — Total Travel に達する直前、スプリングが最も縮んだ状態での反発力。例: MX2A Red は 100 cN、MX2A Black は 110 cN

スプリングは押下距離に比例して反発力が増えるため、底打ち時に指が感じる力は Operating Force ではなく Final Force に近い 値です。「45 cN リニア」と言ってもボトムアウト時には 100 cN 級の反力 が指に返ってくる、という点はスペック表だけ見ていると見落としがちです。

Gateron は同じ概念を 「Bottom Touching Force」 という英語で表記します。Gateron G Pro 3.0 Yellow は Operation Force 50±15 gf / Bottom Touching Force 67 gf と KBDfans 経由の公式仕様で開示されています。

数値の出方は メーカーごとに表記が違う ため、複数軸を横断比較する際は単位(cN / gf)と項目名(Operating Force / Bottom Touching Force / Pressure Point Force)を必ず公式ページ側で確認してください。

Pre-Travel と Total Travel — 押し込み距離の 2 段階

押し込み距離は 2 段階 で構成されます。

  • Pre-Travel(プリトラベル / アクチュエーション距離) — 指を載せた状態から、キーが入力として登録される アクチュエーション点 までの距離。Cherry MX2A Red は 2 mm、Speed Silver は 1.2 mm
  • Total Travel(総ストローク) — Pre-Travel + その先のボトムアウトまで。Cherry MX2A 通常軸は 4 mm、Speed Silver は 3.4 mm

タイピング速度や 連打 を重視するなら Pre-Travel が短い軸(Speed Silver 1.2 mm 等)が有利、長距離キープレスで指の疲労を避けたいなら通常軸の 2.0 mm + 4.0 mm が標準解です。

磁気スイッチ では Pre-Travel が 0.1〜4.0 mm の範囲でユーザー設定可能(製品により異なる)になっており、Cherry のような固定値の概念とは設計思想が大きく違います(→ ラピッドトリガー)。

Gateron G Pro 3.0 と Cherry MX2A の比較(公式仕様)

Cherry 以外の主要互換メーカーも同じ 3 軸で仕様を開示しています。Gateron G Pro 3.0 Yellow(KBDfans 経由の公式仕様)と Cherry MX2A Red を並べます。

スイッチ系統OperatingPre-TravelTotal TravelBottom-out工場プリルブ
Cherry MX2A RedLinear45 cN2 mm4 mmFinal 100 cNYes
Gateron G Pro 3.0 YellowLinear50 ± 15 gf2.0 ± 0.6 mm4.0 mm Max67 gfYes

Gateron の 「Operation Force 50 ± 15 gf」 のように 公差(± 15 gf)が明示 されているケースもあれば、Cherry のように単一値で表記するケースもあります。スペック表の数値は 公差の中央値 として読み、実機ロット差は数 gf 程度ある と捉えるのが現実的です(→ 工場プリルブ)。

「軽い/重い」の感覚目安

押下荷重と打鍵感の関係はあくまで個人差ですが、業界一般の通称として次の区分が広く使われます。

  • 〜45 cN(軽量級) — Cherry MX2A Red / Speed Silver / Gateron Red など。長時間タイピングで指が疲れにくく、FPS 等の高速連打にも向く一方、誤入力(タイピング中に意図せず触れて作動)に注意
  • 45〜55 cN(標準級) — Cherry MX2A Brown(Pressure Point Force 45 cN / Operating Force 55 cN)/ Gateron Yellow(50 gf)など。完成品ゲーミングキーボードのストックでよく見るレンジ
  • 60 cN〜(重量級) — Cherry MX2A Black(60 cN)など。誤入力を避けつつ確実な底打ちを感じたいユーザー向け

タクタイルの Cherry MX2A Brown は Operating Force が 55 cN ですが、アクチュエーション点での力(Pressure Point Force)は 45 cN で、Red と同じ軽さでバンプを感じられる 設計です。「タクタイル=重い」とは限らない好例です。

電気容量式磁気スイッチ は荷重表記が独自

メカニカル軸以外のスイッチでは荷重表記が独自のものになります。

  • Topre / REALFORCE30 g / 45 g / 55 g / 変荷重(30〜55 g) のように gf 単位 で公式表記。アクチュエーション点が静電容量で決まる仕組み(→ 電気容量無接点
  • 磁気スイッチ(Hall Effect / TMR)押下力は固定 / ストロークは 0.1〜4.0 mm 等で可変 という設計が多く、cN / gf の表記は Cherry / Gateron に近い水準(一般に 30〜50 gf 級)

メカニカル軸の cN / gf と直接比較する際は 「同じ単位(gf 換算)でアクチュエーション力を揃える」 のが基本ですが、ストロークと感触の出方が違うため数値だけでの単純比較には限界があります。

本サイトはキースイッチを 編集部実機で打鍵計測していません。各メーカーの公式 spec ページ(製品ページ/データシート/ホワイトペーパー)が一次の根拠で、本ページの数値はそのまま転載しています。打鍵感の評価は個人差・指長・タイピング姿勢・キーキャップ プロファイルスタビライザー筐体マウント でも大きく変わります。

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SOURCES

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