用語の概要
別表記 ハードウェアキャリブレーションハードウェア キャリブレーションhardware calibrationHardware Calibrationinternal LUT calibration3D LUT3D Look-Up Table3次元 LUT1D LUT1次元 LUTLUTLook-Up TableルックアップテーブルCALMANCalmanCalman AutoCalAutoCalAutoCal®Portrait DisplaysLight Illusion ColourSpaceColourSpace CMSASUS ProArt CalibrationProArt CalibrationBenQ Palette MasterBenQ Palette Master ElementPalette Master ElementBenQ Palette Master UltimatePalette Master UltimateBenQ AQCOLOR PilotAQCOLOR PilotAdvanced Color Calibrationハードキャリ
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解説
ハードウェアキャリブレーション とは、PC 側の OS / ICC プロファイル経由ではなく、モニター本体の内部 LUT(ルックアップテーブル)に直接 1D / 3D 補正カーブを書き込む 校正方式です。ASUS の ProArt Calibration、BenQ SW シリーズの Palette Master Ultimate / AQCOLOR Pilot、Portrait Displays の CALMAN AutoCal® 等の専用ソフトと、対応モニター・対応カラリメータ(X-Rite / Calibrite / Datacolor / Klein 等)を組み合わせて実行します。
PC 側 ICC で補正する ソフトウェアキャリブレーション と違い、補正値がモニター内部に保持されるため OS・GPU を跨いだ表示の一貫性が高く、HDMI / DP / USB-C / KVM での入力切替や別 PC との共有でも同じ色が出る、という運用上の利点があります。
本サイトは編集部による校正計測や、ΔE 値の独自実測は行いません。本ページは各社公式ページの仕様記述を出典付きで整理した教養記事です。実際の校正結果は機材・環境・経年で変動するため、最終的な品質判断は使用するソフト・カラリメータの仕様と、メーカーが公式に保証する範囲をご確認ください。
1D LUT と 3D LUT の違い
LUT(Look-Up Table)は、入力された RGB 値を出力 RGB 値に テーブル参照で変換する補正テーブル の総称です。校正用途では大きく 1D LUT と 3D LUT が登場します。
- 1D LUT(1次元 LUT) … R / G / B の各チャネルを独立に補正します。グレースケール(ガンマカーブ / EOTF)や白色点(ホワイトポイント)の調整に使われ、計算が軽い一方、色域そのものや混合色の振る舞いには介入できません。
- 3D LUT(3次元 LUT) … R × G × B の組み合わせ全体を一括で補正します。Portrait Displays は公式ガイドで「A 3D Look-Up Table (3D LUT) is a powerful tool used to precisely map and correct colors on a display.」と定義しており、グレースケール補正だけでは追い込めない 色域マッピング(sRGB / Rec.709 / DCI-P3 / Rec.2020 への正確な投影) や クロストーク(あるチャネルが別チャネルへ漏れる成分)の補正 までを 1 段で扱えるのが特徴です。
ハイエンドのクリエイティブ向けモニターは、この 3D LUT を「モニター内部の専用 IC」に格納 することで、校正値を OS から切り離して保持できる設計になっています。
ハードウェアキャリブレーションが「ソフトウェアキャリブレーション」より優位な点
ソフトウェアキャリブレーション(DisplayCAL / OS 標準 ICC など)は、補正カーブを GPU の出力段(または OS の色管理レイヤ)に当てます。手軽で安価ですが、
- 入力ソースを切り替える(ゲーミング PC / 仕事 PC / コンソール / ノート)と補正が失われる
- HDR 切替時に補正が二重掛けされる、または無効化される
- GPU ドライバ更新・OS の HDR 自動切替で意図せず無効化される
- ICC プロファイルを認識しないアプリ(多くのゲーム・一部の動画再生・全画面ブラウザ)では効かない
といった構造上の制約があります。
これに対しハードウェアキャリブレーションは、補正カーブがモニター内部に書き込まれるため、入力ソース・OS・GPU が変わっても表示色は同じ という挙動を取ります。校正値はモニター側の OSD で「User Mode 1 / Calibration 1 / sRGB-cal」等のプリセットとして呼び出すのが一般的です。
各社のハードウェアキャリブレーション ソフト
ハードウェアキャリブレーションは「専用ソフト × 対応モニター × 対応カラリメータ」の 3 点セットでしか動作しません。代表的な組み合わせを公式ページの記述から整理します(カラリメータ・対応機種は各社公式ページの最新版を必ず確認してください)。
Portrait Displays Calman / AutoCal®
業務用ディスプレイ校正の標準ソフトで、テレビ・リファレンスモニター・OLED ゲーミングモニターまで広く対応します。Calman の AutoCal® は、対応機種であれば カラリメータ計測 → モニター内部 LUT への自動書き込みまでを一連の自動化 で完結させる機能です。
- 3D LUT の定義(Portrait Displays 公式ガイド verbatim): 「A 3D Look-Up Table (3D LUT) is a powerful tool used to precisely map and correct colors on a display.」
- AutoCal の操作(Portrait Displays 公式ガイド verbatim): 「Press the [AutoCal button] and configure the 3D LUT to meet the specifications outlined by your hardware manual or manufacturer」
- AutoCal 対応ブランド(Portrait Displays 公式ガイド verbatim 抜粋): Acer, AJA, AOC, ASUS, BenQ, Boland, Dell, Flanders, Hisense, LG, MediaTek, MSI, Panasonic, Philips, Razer, SmallHD, Sony, XPPen, Xencelabs。実際にどの「モデル」が AutoCal 対応かはブランドごとに限定されるため、購入予定機種の対応可否は Portrait Displays の Resource Center / 各社製品ページで個別に確認する必要があります。
ASUS ProArt Calibration(ASUS ProArt シリーズ)
ASUS が ProArt 系モニター向けに無償提供する純正校正ソフトです。
- SDR / HDR 対応(ASUS 公式 verbatim): 「ASUS ProArt Calibration is a free software that helps users calibrate in both SDR and HDR modes」
- 対応カラースペース(ASUS 公式 verbatim): 「sRGB, Adobe RGB, DCI-P3, Rec. 709, and Rec.2020 color spaces」
- 対応カラリメータ(ASUS 公式 verbatim): 「ProArt displays are compatible with most major calibrators, including those from X-Rite, Datacolor and Klein」
- サードパーティ校正ソフトとの連携(ASUS 公式 verbatim): 「work seamlessly with Calman and Light Illusion ColourSpace CMS professional hardware calibration software」
すなわち、ProArt 系は ASUS 純正ソフトでも、Calman / ColourSpace 等のプロ向けソフトからも ハードウェアキャリブレーションを実行できる、という位置付けです。
BenQ Palette Master Ultimate / AQCOLOR Pilot(BenQ SW / PD シリーズ)
BenQ SW シリーズは長く Palette Master Element → Palette Master Ultimate という名称で純正校正ソフトを提供してきましたが、2026 年現在は後継 AQCOLOR Pilot へ移行が進んでいます。
- 後継ソフトへの移行(BenQ AQCOLOR Pilot Specifications verbatim): 「AQCOLOR Pilot is now officially available as the successor to Palette Master Ultimate.」
- ハードウェア キャリブレーション対応機種(BenQ verbatim): 「Advanced Color Calibration (hardware calibration): SW242Q / SW270C / SW271C / SW272U / SW272Q / SW321C / PD2770U / SW272QN」
- 対応カラリメータ(X-Rite / Calibrite, BenQ verbatim 抜粋): 「X-rite i1Display Pro/ Calibrite ColorChecker Display Pro/ X-rite i1Display Pro Plus/ Calibrite ColorChecker Display Plus/ X-rite i1Studio/ Calibrite ColorChecker Studio」「X-rite i1Pro 2/ i1Pro 3/ i1Pro 3 Plus」
- 対応カラリメータ(Datacolor, BenQ verbatim 抜粋): 「Datacolor Spyder X/ X2 (Pro/ Elite/ Ultra) / Spyder Pro」
- 新旧ソフトの併存制限(BenQ verbatim): 「AQCOLOR Pilot and Palette Master Ultimate software programs cannot be installed on the same computer at the same time.」
BenQ SW シリーズを購入する場合は、自分の機種が AQCOLOR Pilot の Advanced Color Calibration 対応リスト に入っているかを必ず確認し、保有または購入予定のカラリメータが対応リストに含まれているかも併せて確認します。
「工場出荷時校正(factory calibrated)」との関係
製品スペック欄でよく見る 「工場出荷時 ΔE<2」「Calibrated to ΔE<1」「Pantone Validated」 といった文言は、出荷時の 1 回のみ メーカー工場で測定・調整された値です。詳細は [[delta-e]] を参照してください。
- 工場出荷時校正は 「その個体が出荷時点でスペックを満たしていた」 という記録であり、経年(OLED の場合は ABL 動作や輝度低下、液晶の場合はバックライト劣化)で値はズレていきます。
- 一方ハードウェアキャリブレーションは、ユーザーが任意のタイミングで再校正でき、結果をモニター内部に書き戻せる仕組みです。
- 長期間にわたって ΔE<2 等を維持したい用途では「工場校正されている」だけでなく「ユーザー側で再校正できるハード校正対応機」を選ぶのが筋となります。
ハードキャリ対応モニターを購入するときのチェックリスト
ハードウェアキャリブレーションを目的に投資する場合、最低限以下を モデル個別に 確認します(メーカー横断の「対応」表記だけを信用しないこと)。
- 対応ソフト … メーカー純正ソフト(ProArt Calibration / AQCOLOR Pilot 等)の対応機種リストに掲載されているか。Calman AutoCal / Light Illusion ColourSpace 等のサードパーティ ソフトを使う場合、Portrait Displays・Light Illusion 公式の対応モニター リストに自機種が掲載されているか。
- 対応カラリメータ … 保有または購入予定のカラリメータ(X-Rite / Calibrite / Datacolor / Klein 等)が、選んだソフトの対応リストに掲載されているか。
- 書き込み先の LUT 種別 … 1D LUT のみか、3D LUT 対応か。広色域モニターの色域マッピング精度を追い込みたい場合は 3D LUT 対応が必須に近い。
- SDR / HDR 両対応か … ASUS ProArt Calibration は公式に「SDR と HDR 両モードで校正できる」と明言しています。HDR コンテンツ制作用途では HDR キャリブレーション対応が必要。
- 対応カラースペース … sRGB / Rec.709 / DCI-P3 / Adobe RGB / Rec.2020 のうち、業務で必要なターゲットがソフト側でサポートされているか。
- 校正値の保存先(プリセット枠) … モニター OSD 上で「User / Calibration 1 / Calibration 2」のように複数枠に保存できるか、上書きだけか。
- 接続要件 … 校正中は DDC/CI(参考: [[ddc-ci]])または USB 経由でモニターと PC が通信できる必要があります。KVM 切替や中継アダプタが間に入ると通信が落ちて校正が失敗することがあります。
本サイトでの扱い
本サイトは、各製品ページ・ランキング・比較記事の仕様欄に「工場出荷時 ΔE 値」や「Pantone Validated」「Calman Verified」「ハードウェア キャリブレーション対応」が メーカー公式 スペック表に出典付きで載っている範囲のみ 記載します。編集部による独自校正計測や、ΔE 値の独自実測は行いません。実際の色精度は個体差・経年・設置環境で変動するため、業務用途では必ずご自身の環境で再校正してください(景表法上の優良誤認回避)。
関連用語
- [[delta-e]] — 工場出荷時校正・ΔE<2 / ΔE<1 の意味と計算式
- [[color-gamut]] — sRGB / DCI-P3 / Adobe RGB / Rec.2020 の色域定義
- [[color-depth-10bit-frc]] — 8bit+FRC / 10bit パネルと LUT 演算精度
- [[srgb-clamp-color-mode]] — 広色域モニターの sRGB クランプモード(ソフト校正なしでも色域を絞る仕組み)
- [[displayhdr]] / [[hdr]] / [[eotf-pq-hlg]] — HDR キャリブレーションで参照される EOTF・輝度規格
- [[laptop-display-pantone-validated]] — Pantone Validated とは何か(ノート PC ディスプレイの工場校正認証)
- [[ddc-ci]] — モニター⇔PC のソフトウェア制御チャネル(ハードキャリ時に使用)
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参照元(一次ソース)
本用語の説明は次の一次ソース(規格団体・メーカー公式資料など)を参照しています。