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PSU パワーエクスカーション(ATX 3.x / 12V-2x6 過渡応答仕様)

Intel ATX 3.0 / ATX 3.1 デスクトップ電源設計ガイド(Multi Rail Desktop Platform Power Supply Design Guide, Document ID 336521)で『Table 3-3: PCIe AIC and PSU Power Budget used for Peak Power Excursion』として定義された、定格電力に対する過渡応答(パワーエクスカーション)要件。GeForce RTX 40 / 50 世代の GPU が μs〜ms オーダーで定格を超えるピーク電力を引くことを前提に、12V-2x6 コネクタを備える 450W 超の PSU は 100μs で 200%、1ms で 180%、10ms で 160%、100ms で 120% といった階層のピーク負荷を耐えることが求められます。Corsair RMx 等の市販品は『ATX 3.1 / PCIe 5.1 準拠』として公式に対応を明記しています。

GLOSSARY

用語の概要

別表記 PSU Power ExcursionPower ExcursionパワーエクスカーションATX 3.0 Power ExcursionATX 3.1 Power ExcursionATX 3.x Power ExcursionPeak Power RequirementsPower Excursion TestingGPU Transient SpikeGPU トランジェントスパイクTransient Spike200% 100us200% 100μs180% 1ms160% 10ms120% 100msTable 3-312V-2x6 PSU spec12VHPWR PSU specPCIe AIC Power Budget

関連用語
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出典
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最終更新
DEFINITION

解説

PSU パワーエクスカーション(PSU Power Excursion) とは、Intel が公開している『ATX Version 3.0 Multi Rail Desktop Platform Power Supply Design Guide』(Document ID 336521、Alder Lake Desktop プラットフォーム)および、その ATX 3.1 対応版である v2.1a(2023-11-01 付)で定義された、デスクトップ PC 用電源(PSU)が一時的に定格電力を大きく超えるピーク負荷をどれだけ耐えるか を規定する過渡応答仕様です。GeForce RTX 40 / 50 世代に代表される現行 GPU は、μs〜ms オーダーの短時間 に定格を大きく上回るピーク電力を引くことが知られており、Intel 公式 ATX 3.x 設計ガイドはこの過渡応答を 『Table 3-3: PCIe AIC and PSU Power Budget used for Peak Power Excursion』 という階層表で要件化しています。

本ページでは、既存の ATX 3.x/12V-2x6 コネクタ用語ページ では触れていない 「PSU 側の過渡応答仕様」 に絞って、Intel 公式 EDC ドキュメントと市販 PSU メーカーの公式表記を整理します。

本サイトとしては Intel / Corsair が公式ページに記載している事実表記のみを引用しています。実機での電源負荷計測・スパイク発生回数の計測は一切行っていません。また「200% 耐性 = 必ずシャットダウンしない」「ATX 3.1 = 必ず ATX 3.0 より安心」という断定優越主張は行いません。

Intel 公式: Table 3-3 PSU Power Excursion 階層

Intel EDC『PSU Power Excursion』ページ(v2.1a / Table 3-3)に 公式明示 されている階層は以下の通りです。

12V-2x6 コネクタ搭載・450W 超の PSU

持続時間(TE)ピーク負荷(定格に対する %)テスト Duty Cycle
100 µs200%5%
1 ms180%8%
10 ms160%12.5%
100 ms120%25%
Infinite(連続)100%(定格)

12V-2x6 コネクタを持たない・450W 以下の PSU

持続時間(TE)ピーク負荷(定格に対する %)テスト Duty Cycle
100 µs150%5%
1 ms145%8%
10 ms135%12.5%
100 ms110%25%
Infinite(連続)100%(定格)

Intel 公式ページは、この表の前提として次のように説明しています。

『The largest power excursion coming from PCIe Add-in cards comes from the 12V-2x6 connector, and power supplies greater than 450 watts are expected to have at least one 12V-2x6 connector.』

― Intel EDC『PSU Power Excursion』ATX Version 3.0 PSU Design Guide v2.1a

つまり Intel は 「最大の過渡電力消費は 12V-2x6 コネクタ経由の PCIe アドインカード(= ハイエンド GPU)から来る」 と公式に位置づけており、450W 超の PSU は 必然的に 12V-2x6 を 1 本以上備えること が期待されています。

重要: テスト Duty Cycle(5% / 8% / 12.5% / 25%)は 「ピーク負荷をそのオン時間比率で繰り返し印加するテスト条件」 として公式に定義されているもので、「ユーザーの実使用環境でこの比率でスパイクが発生する」という意味ではありません。実環境のスパイク頻度は GPU・ドライバ・ゲーム・電源投入直後/VRAM クロック切替時など多数の要因で変動します。

1000W PSU の場合のピーク負荷の例(試算)

Intel 公式 Table 3-3 の階層を 定格 1000W の PSU に当てはめると、各時間スケールで PSU が耐えるべき瞬間ピーク負荷の 算術試算 は次のようになります(Intel 公式 Table 3-3 のパーセンテージ × 1000W をそのまま掛けた値であり、本サイトが独自に計測した値ではありません)。

持続時間ピーク %1000W PSU での試算ピーク
100 µs200%2000W
1 ms180%1800W
10 ms160%1600W
100 ms120%1200W
連続100%1000W(定格)

注意: 試算値はあくまで 「Intel 公式テスト要件として求められる耐性レベル」 であり、ユーザー宅の壁コンセント(日本の家庭用 100V 15A 回路では理論上限約 1500W)で 連続して 2000W を引き出せるという意味ではありません。100µs / 1ms / 10ms スケールの瞬間値であり、PSU 内部の 大容量コンデンサ + フィードバック制御 が吸収する短時間ピークの規格上の要件です。

ATX 3.0 から ATX 3.1 への変更点(公式に明示されている範囲)

Intel EDC『ATX Version 3.0 Multi Rail Desktop Platform Power Supply Design Guide』は、v2.0(ATX 3.0)→ v2.01(ATX 3.0 改訂)→ v2.1 / v2.1a(ATX 3.1) とリビジョンを重ねています。

項目ATX 3.0(v2.0 / v2.01)ATX 3.1(v2.1 / v2.1a)
Power Excursion 階層(Table 3-3)上記 200% / 180% / 160% / 120% の同階層を 明示同階層を継続明示
GPU 補助電源コネクタ12VHPWR(16 ピン)12V-2x6(12VHPWR を改良した新コネクタ)
文書セクション旧『ATX12V Specific Guidelines』新『ATX12V Specific Guidelines 3.1』を追加

ATX 3.1 で 「Power Excursion テスト要件そのもの(200%/100µs ほか)」が緩和されたわけではなく、Intel EDC v2.1a の同名ページでも Table 3-3 の階層が継続して公式明示されています。一方、ATX 3.1 が大きく変更したのは GPU 補助電源コネクタを 12VHPWR から 12V-2x6 に置換 した点で、これは ATX 3.x/12V-2x6 コネクタ のページでサイドバンド信号ピン・挿し込み深さ検知の見直しとして整理しています。

注意: Intel EDC『PSU Power Excursion』ページは ATX 3.0(v2.01)版と ATX 3.1(v2.1a)版の両方で Table 3-3 のパーセンテージ値(200% / 180% / 160% / 120% / 100%)が同一 であることを本サイトでも 2026-06-10 時点で両ページの WebFetch により確認しています。「ATX 3.1 になるとピーク耐性が上がる」「ATX 3.0 では足りない」という優越主張は Intel 公式の文面からは導けません。

なぜパワーエクスカーション仕様が必要になったのか

GeForce RTX 30 シリーズ(Ampere)以降、ハイエンド GPU は TDP / Total Graphics Power の数値より瞬間的に大きく上回るスパイク を引き出すことが、PSU メーカー・OS / ドライバ実装側の双方から問題視されてきました。

  • 連続定格は守れていても、μs〜ms オーダーの過渡負荷で PSU の保護回路(OCP / OPP / OVP)が誤動作 すると、ゲーミング中に 突発的にシャットダウンや再起動 が発生する
  • 旧来の ATX 2.x 仕様 には、こうした µs / ms スケールのピーク負荷耐性 を体系的に規格化した条項が存在しなかった

Intel は ATX 3.0 でこの問題に 「Power Excursion」 という用語と Table 3-3 階層を導入し、12V-2x6 + ATX 3.x 準拠 PSU の組み合わせ「定格より大きく上振れる瞬間ピークでも連続稼働できる前提」として体系化しました。ATX 3.1 はこの体系を継続しつつ コネクタを 12V-2x6 へ改良 したリビジョンと位置づけられます。

注意: ATX 3.0 / 3.1 準拠 PSU を使えば すべての GPU シャットダウン問題が解消する という主張ではありません。GPU 側のドライバ挙動・電源投入直後のラッシュ電流・壁コンセント側の電圧降下・ケーブル接触抵抗など、PSU 単体の Power Excursion 仕様で吸収できる範囲には限界があります。

市販 PSU メーカーの公式表記

主要 PSU メーカーは ATX 3.1 / 12V-2x6 / Power Excursion 対応を公式ページで明示しています。

Corsair RMx Series RM1000x(公式)

Corsair RM1000x(RMx シリーズ)公式製品ページの ATX 3.1 関連表記を、公式英語表記そのまま引用すると以下のようになります。

項目公式表記
ATX 規格準拠ATX 3.1 compliant, supporting PCIe 5.1
GPU コネクタNative 12V-2x6 GPU cable included for use with modern graphics cards such as the NVIDIA® GeForce RTX™ 40 Series.”
過渡応答handling GPU power spikes up to 200% for milliseconds
付属ケーブル”1x PCIe 12V-2x6-pin (12+4)” / 600W 定格 / Embossed Type 4 / 650mm ±10mm
連続定格1,000 Watts continuous output at 50°C

Corsair は別途 Explorer ブログ『CORSAIR RMx PSUs are now ATX 3.1 compatible』でも RMx シリーズが ATX 3.1 + native 12V-2x6 cable へ移行したことを公式アナウンスしています。

注意: Corsair 公式表記の「handling GPU power spikes up to 200% for milliseconds」は 「Intel ATX 3.x 設計ガイド Table 3-3 の 200% 階層に対応するレベルの GPU スパイクを扱える」 という事実表記であり、本サイトとして 「Corsair RM1000x が他社 PSU より優れている」「ATX 3.0 世代 PSU では確実に落ちる」 という比較・優越主張は行いません。

ユーザー観点での読み解き方

ゲーミング PC を BTO または自作で選定する際、Power Excursion 仕様は次のように読み解きます。

  • GeForce RTX 50 系(70 Ti / 80 / 90)など 12V-2x6 補助電源を使う GPU を載せる構成では、ATX 3.x / ATX 3.1 準拠 かつ native 12V-2x6 ケーブル付属 の PSU を選ぶのが、Intel 公式 Table 3-3 階層の前提に乗る構成
  • PSU のスペック表に 「ATX 3.0」「ATX 3.1」「12V-2x6」「12VHPWR」 の各表記がどの段階で明示されているかを公式ページで確認
  • 定格容量は、GPU メーカー推奨容量と CPU 系・ストレージ系・ファン・ARGB を足した連続値を 平均負荷率 50〜70% に収まる位置 で選び、Power Excursion 階層は 「ピーク時に保護回路で落ちないための余裕」 として読み替える
  • BTO 機の構成表で 「ATX 3.x」「12V-2x6」「ATX 3.1 / PCIe 5.1 準拠」 の記載がない場合、PSU が ATX 2.x 世代の流用品である可能性があるため、メーカー・型番から PSU 側公式ページを確認

注意: ATX 3.x / 3.1 表記の有無だけで PSU の品質が決まるわけではありません。80 PLUS 認証グレード連続定格容量 など、別の選定軸も併用してください。

用語の混同に注意

混同しやすい用語正しい区別
Power Excursion vs 連続定格 / Rated PowerPower Excursion は µs〜ms スケールの瞬間ピーク で、連続定格は 無限時間(Infinite)で 100% として Table 3-3 に並列で明示されている別物
Power Excursion vs Hold-up TimeHold-up Time は AC 入力が瞬断したとき何 ms 出力を維持できるか の指標で、ATX 3.x では別途定義。Power Excursion は AC 入力健全下での負荷側スパイク耐性
12VHPWR vs 12V-2x6同形状コネクタファミリだが、12V-2x6 は 12VHPWR のサイドバンド信号ピン・挿し込み検知を改良した後継 で、ATX 3.1 推奨はこちら(詳細は 12V-2x6 用語ページ
ATX 3.0 vs ATX 3.1Intel EDC ドキュメント上は 同じ Document ID 336521 のリビジョン v2.0 / v2.01 vs v2.1 / v2.1a として整理。Power Excursion Table 3-3 のパーセンテージ値は 両者で同一(本サイト 2026-06-10 確認)
Power Excursion 200% vs 壁コンセント連続 2000WPower Excursion は µs / ms スケールの瞬間値 で、PSU 内部の大容量コンデンサが吸収する規格要件。AC 側の連続電力(日本の家庭 100V 15A 回路では理論上限約 1500W)と直接比較すべき値ではない

PSU 選定時に確認すべきポイント

ATX 3.x / 3.1 / Power Excursion 観点で PSU を選ぶ際は、以下を公式ページ・スペック表で確認します。

  • ATX 規格表記(“ATX 3.0” / “ATX 3.1” / “ATX 3.1 compliant” / “Intel ATX 3.x” のいずれの語が使われているか)
  • GPU 補助電源コネクタ(“12VHPWR” か “12V-2x6 (12+4)” か)
  • native ケーブル付属 vs アダプタ変換(GPU メーカー(例: NVIDIA)は native 12V-2x6 ケーブル を推奨)
  • 連続定格容量(GPU メーカー推奨容量+ CPU 系+システム余裕)
  • 80 PLUS 認証グレード(Bronze / Gold / Platinum / Titanium 等)
  • メーカー公式ページに 「Power Excursion」「200% spike」「PCIe 5.1」 の語が明示されているか

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